マンションの建替え事業
マンション建替え事業を実施する場合、区分所有者をはじめ関係者が多く、事業の流れも単純ではありません。マンションを建替える手法として、(1)「等価交換方式」と(2)「マンション建替え等の円滑化法」を活用した方式が考えられます。
ここでは、5分の4以上の賛成で実施することができる(2)の手法について説明させていただきます。
事業の進め方の基本方針
(1)透明性のある公正公平な事業推進。
- ・事業参加者の選定方法。
- ・定期的な区分所有者への報告、全体説明会・個別説明。
→区分所有者の皆様ができるだけ同じ理解を得られるように努力する。
(2)最終的な意思決定は、各区分所有者が行う。
・コンサルタントは、個別に資料作成や説明を行い、意思決定を支援していく。
「マンション建替え円滑化法」(組合施行)の活用の利点
(1) 法人格を有する建替組合(事業主体)の設立(行政庁が認可)
・法人として事業参加者との契約が可能。→事業協力者、設計者、施工者等の契約が組合として可能となる。
(2) 税制上の優遇処置(建替組合は、公益法人的な扱いを受ける)。
(3) 区分所有権や抵当権等、権利関係の円滑な移行(権利変換手法)。
事業主体(マンション建替え円滑化法による)
事業主体:マンション建替組合
・建替えに合意した地権者
・参加組合員(知識や資力のある会社)
事業運営推進支援
・コンサルタント
※参加組合員(一般的にはマンション分譲を行う不動産会社)
・保留床(地権者が取得する以外の専有床)を買取る。
→事業の収入のほとんどを占める。
・資金繰りの支援。
・設計内容に対する助言、建設会社選定への支援、建替組合の運営支援。
経済性のしくみ
事業費内訳
(1)各種調査費
(2)近隣対策費
(3)事業運営+事務費
(4)設計費+申請費
(5)解体+建設工事費
(90%程度を占める)
(6)その他
経済性向上のためには
(1) 専有面積増
(2) 保留床負担金増
(3) 適正で無駄のない工事費
※保留床買取り価格は、一般分譲価格の75%程度
経済性の指標:還元率とは
区分所有者の皆様が経済的負担無し(ただし、引っ越しや工事中の仮住居日は原則除く)で取得できる、現在の所有面積に対する比率
(例えば)
現在80m2を所有、還元率80%の場合
80m2×80%=64m2までは取得できる(平均で)。
※注意:還元率は平均的な数字なので、実際の権利変換では、再建マンションにおいて、取得する部屋の位置により変わってくる。
特に階数の多い建物は価格差が大きい。
還元率の計算
計画専有面積-(総事業費÷権利者価格)=負担無しで取得する専有面積
現在の専有面積
(例題)
▶従前(建替え前)
5階建50戸(1部屋20坪)
総専有面積 1,000坪
▶従後(建替え後)
8階建70戸(1部屋20坪)
総専有面積 1,400坪
▶事業条件
(1)総事業費 24億円
(2)分譲価格 400万円/坪権利者価格 300万円/坪
▶ 還元率は
1,400坪-(24億円÷300万円)=600坪
1,000坪
権利変換
権利変換とは、従前の資産(建替え前)から従後の資産(建替え後)に移行することをいいます。
還元率説明で利用した凡例で、権利変換について具体的に説明します。
▶従前評価:所有されている部屋を資産評価
(1)市場評価ではなく、事業の採算性から算出。
(2)従前評価総額を事業収支から計算し、それを登記簿上の権利で個々に按分。
総額=負担無しで取得できる面積×権利者価格
(還元率計算の凡例での条件より)
600坪×300万円=18億円:従前評価総額
18億円÷1,000坪=180万円:1坪あたりの評価額
180万円×20坪=3,600万円:1部屋あたりの評価額(平均値)
▶従後評価:再建マンションの価格
(1)区分所有者は権利者価格で取得できる。
→ 分譲価格×75%(大きなメリット)
(2)具体例:20坪6,000万円(分譲価格8,000万円)の部屋を取得
(実際は部屋の位置により価格が異なる)
▶ 負担額:6,000万円-3,600万円=2,400万円
権利行使の選択肢としては、再建マンションの部屋を取得する他に、
補償金を受取り転出することもできます。
抵当権者について
(1)再建マンションに部屋を取得する区分所有者の場合
・抵当権は、再建マンションの登記に移行されます。ただし、抵当権者の同意が必要となります。
→同意が得られれば、抵当権を抹消する必要はありません。
(2)補償金を受け取って転出する場合は、補償金で抵当権を抹消することになります。
借家権者との調整
借家権者は、建替え決議の当事者ではなく関係権利者となります。マンション建替えの際、区分所有者の責任で借家契約の解除、円滑な転居を実行します。本格的な交渉に入るのは建替え決議後ですが、リスクを考え次のことをご検討ください。
- (1)新規契約は、定期借家契約がお勧めです。また、借家人と契約更新する場合も定期借家契約に切り替える交渉を行うこともお勧めします。
- (2)普通借家契約は、建替決議が成立し、行政から建替組合を設立・認可されるまでに合意解約しておくことが必要です。その場合でも、着工直前まで住まわせることはできます。
- (3)借家人との合意解約及び転居に伴う費用は、対象となる区分所有者の負担となります。
- (4)借家権が継続しますと、借家権者が「借家権の取得を希望しない」旨の申請を行います。これは、転出を条件に補償金を得ることや、権利変換計画書に借家権者として記載され権利行使できるものです。ただし、これらの費用は従前評価額から差し引かれる等区分所有者に負担していただくことになります。
コンサルタント業務の基本的な考え方
マンション建替え事業の推進に必要な業務を自ら行うか、専門的業務を委託する場合は、その選定を行い、業務内容の精査も行います。事業全体だけでなく、個別対応も行い、皆様のご判断を支援していきます。
コンストラクション・マネジメント
CM(コンストラクション・マネジメント)方式とは、CMr(コンストラクション・マネジャー)が設計・発注・施工の各段階において、発注者側の補佐・代理人として、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理等の各種マネジメント業務の全てまたは一部を担うことです。
元・建築マネジメント株式会社では、発注者の実情や状況、要望に合わせて業務の遂行をサポートいたします。
CMrの業務・管理項目
段階別業務項目
- A企画段階
-
・各種調査・市場、施設、法規等
・発注者要求のとりまとめ
・事業条件の設定
・事業計画案の作成
・コスト、スケジュール、品質
・事業決定の支援
・設計者選定作業、決定支援
- B設計段階
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・設計内容のレビュー、提案
・コスト、スケジュール、品質
・設計スケジュール管理
・条件変更の管理
- C工事発注段階
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・発注方式の検討、決定支援
・発注作業、結果評価
・建設会社との交渉、決定支援
・請負契約の補佐
- D工事段階
-
・設計監理状況の管理、指導
・施工状況の確認(品質確保)
・変更の管理
・検査の立会
- E施設管理段階
-
・管理会社選定支援
・瑕疵検査の支援
・長期修繕計画の作成
・改修計画の支援
CMrの管理項目
- プロジェクト全体の管理
-
・情報管理
・会議体の提案と運営支援
・関係者の役割分担
・リスク管理
・クレーム対応の支援
- コスト管理
-
・計画段階で目標を設定
・段階ごとに概算で確認
・VEの実施
・適正な工事費での発注
・変更管理
- 品質管理
-
・スペック、グレード設定
・設計レビュー
・工事状況の確認
・検査
- スケジュール管理
-
・効率的なマスタースケジュール作成
・設計スケジュール管理
・工事工程確認
※発注者はワンフェーズだけ、あるいは全てのフェーズをまるごと依頼する等、目的に応じて業務を依頼できます。
発注者ニーズへの対応
CM方式は、発注者のニーズに的確に対応し、解決していきます。
・技術者や専門家が少なく、事業を上手く進められない。
・発注者が複数の組織または人で構成されており、全てにおいて透明性を高めたい。
・事業コスト、スケジュールが目標に収まるようにコントロールして欲しい。
・設計施工で発注したが、仕様、コスト、スケジュールが守られるか心配である。
・建設コストが適正か不安である。
当社は発注者の立場に立ち、高品質なサービスの提供かつ無駄のないスケジュール、効率的なコストの実現を目標に、透明性のある事業運営を目指します。
建設コスト適正評価
発注者ニーズ
発注者から当社にご依頼をいただくケースとして、大まかに以下の3パターンが考えられます。
- CASE1
- 設計・施工、もしくは特命工事等で 建設会社から見積書が提出され、内容が適正かどうか判断できない等のケース。
- CASE2
- 数社から見積を徴収した。
総額での比較はできるが、詳細に内容を比較し、適正な工事費で発注したい等のケース。
- CASE3
- 見積を徴収したが、予算を超過している。設計の無駄な部分を含めて内容を精査して欲しい、また建設会社との交渉も依頼したい等のケース。
業務内容・手順
-
STEP1
評価見積書の
作成 -
STEP2
評価見積書を
建設会社に渡す -
STEP3
建設会社より
回答 -
STEP4
建設会社と交渉
(決着まで) -
STEP5
報告書の
提出
※評価見積書とは、見積の全項目に対して、適正と思われる価格で計算し直し、提出された見積との比較分析を行った書類。
※評価見積書を基に、細目について価格の妥当性を交渉する。
※コスト、品質の面を中心に図面の確認チェックも行う(オプション)。
適正な工事費での発注を目指し、詳細に検討及び交渉を行います 。
CMアドバイザー業務
CM方式の採用や、建設事業の仕組みづくりを検討しているクライアント(官庁及び民間)に対し、提案・書類作成・説明を行う等の支援をしていきます。また、事業開始後も円滑に推進するためのアドバイスもいたします。
[CM方式の採用]
(1) 発注者組織の現状や予定している事業内容を調査し、CM方式採用の目的を明確にする。
(2) CM方式の説明や採用した場合の効果についてまとめた書類を作成する。
(3) 発注者組織の関係者に説明を行う。
(4) CM会社選定方式決定の支援、必要書類の作成を行う。
(5) CM会社選定の支援を行う。
(6) CM会社の業務内容のモニタリングを行う。
CM方式の検討やCM会社選定の支援、CM業務のモニタリングやアドバイスを行い、発注組織をサポートいたします。
[建設が伴う事業の仕組みづくり]
建設が伴う事業の仕組みづくりを検討している発注組織に対して、調査、企画提案、検証、アドバイス等を行い、支援していきます。